台本は線路だ。

当時33歳 思考

役者は舞台に敷かれた線路を走りだす。

脱線事故を起こさないよう、初めは慎重に。次第に加速して。

やがて静かに離陸する。

離陸した役者は、少しくらい線路を逸れても事故にはならない。

でも気をつけよう、速度が落ちたらまた線路へ戻らねばならないのだから。

それに、飛びながら加速するのは線路の上よりずっと難しい。

より高く飛べば、より大きな自由を得る。しかし舞台を駆け抜けるのは一人ではないのだから、仲間との距離を常に見張っていよう。

皆で飛べれば良いけれど、線路を見失わないように気をつけねばならない。

役者が台本から飛び立ち、台本を俯瞰しながら優雅に飛び回る時、観客もまた、気持ちよく風を感じている。